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宵風!
「隠の王」の10巻をやっと借りて読みました。
イラストは貸してくれた友達への手紙に描いた宵風。
初めて描きました・・・難しいな。もうちょっと色は濃かったんですけどね。
でもスキャナーで取り込んだらなんかうまい具合に消えたので良しとします。

小話は「隠の王」の雪見と宵風です。
これは、消えてしまった彼への追悼記念。
何が書きたかったんだか分からなくなってしまったけれど、
本当はもっともっと、たくさん詰め込みたかった。
さようなら、ありがとう、ってきっと言いたかったんだろうなと思って書いたんです。
カプ要素はありません。シリアス風味。死ネタでも、ネタバレでもありません。
読んでくださるという方は追記からどうぞ。


何にも、望まないで生きていることが僕の全てだった。
外界を全てシャットアウトして、生きることが。
でも、するりと入ってきた人が居た。

「宵風だ、お前は宵風」

名前まで付けてくれた。不安定な存在に名前をくれた。
そういえばある時、雪見はこう言っていた。

「宵風、お前には分からないかもしれないが、」

そう前置きして、甘くて温かいレモネードを作ってくれて。
寒くないようにブランケットを肩に掛けてくれて、頭を撫でてくれて。
(その温かい感覚が、雪見が与えてくれる温かさが優しくて僕は好きだった)

「名前っつーのは、案外大事なんだよ」

「・・・?」

「お前には宵風ってつけたけど、それ、前飼ってた猫の名前なんだ」

あ、前にも話したか?これ。まあいいか、なんて笑う。
温かい笑顔、温かな場所、レモネード、ブランケット、服。
全部全部、用意してくれた。優しくしてくれた、雪見。

「大事にしてたんだけどいなくなっちまってな、哀しかったの覚えてる」

苦笑する姿が寂しそうで、手を伸ばしかけたけれど、結局引いた。
(雪見がしてくれるみたいに、頭を撫でたら笑ってくれるかなって思ったんだ)

「宵に吹く風、俺好きなんだ。あ、宵って夜のことな」

「・・なんで」

「ん?」

「なんで、宵の風、好きなの」

「さあ、なんでかなぁ」

ごまかしている風ではなかった。きっと雪見の中でも意味はないんだ。
僕が発した質問に、真剣に考えてくれる。僕の言葉に反応してくれる。
それが単純に嬉しかったのだけれど、胸が一杯でうまく言葉に出来なかった。

「多分、夜に外出るのが多かったからかな」

「・・・忍だから?」

「かもしれねえな。でも、忍になる前から、俺不良だったからなぁ」

「安心する?」

「そうだなぁ、俺夏の風が一番好きだな、あったかいだろ」

「・・・雪見なのに」

「名前で判断するなよ、まあ、雪も好きだけどな」

朝積もってるの見ると、キラキラ光って綺麗だろう、なんて笑う。
コクリと同意を持って頷くと、雪見は頭を撫でてくれる。
少し乱暴で髪がくしゃくしゃになるけれど、暖かい手が好きだった。

「・・・雪見」

「うん?どうした?」

「雪見の、」

「うん」

「・・・なんでもない」

何かを、伝えようとしたんだ。何か、大切なことを。
それは感謝だったかもしれないし、感想だったかもしれない。
でも、言ってしまうには大きすぎて、言葉にならなくて、分からなくて。
だから言葉を止めた。でも、不思議そうな表情一つして、雪見は言った。

「そうか。あ、なんか食うか?ポテチあるぞ」

「食べる」

「お前、ほんとよく食うなあ」

表の仕事だけじゃ賄えねえなあ、あ、別にいいけどよ。なんとかなってるから。
そんな風に笑って、雪見は戸棚の中からポテトチップスを取り出した。



(大切なモノを大切と言える、好きなモノを好きと言える、そんな勇気が僕は欲しかった)







あとがきという名の懺悔

雪見を恋しがる宵風が、とても愛おしかったので雪見と宵風にしました。
本当は"空"について言わせる予定だったんです、雪見に。
"空"には「実体がない」って意味があります。基本的にあやふやな意味を持つ漢字なんです。
でも、宵風は違う。夜に吹く風は少なくとも一人の、雪見の心を和ませた。
雪見と宵風の二人は、本当は過ごした以上に深く互いを慈しみあっている。
ココアじゃなくてレモネード。最後に交わした微笑み。
たった数年間の積み重ね、でもそれが"空"だった彼を救ったのは確か。
それを書きたかったんですけど、ここで補足しても何とも言えない出来になってしまった。
でも追悼記念。たとえまたどこかで出会えたとしてもこれは彼の、宵風の追悼記念。
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